本来、時間はとぎれることなく流れるものだろうし、だから年月の暦の上での区切りなんて、本当はそんなに意味のあることではないのかも知れない。それでも年が明けると、なんだか真新しい真っ白な時間が始まる気がして、少し身が引き締まる。

　13歳でギターを手にして以来、ずっと年末に可能な限り実行してきたことがある。それは、年が明ける瞬間にギターを弾いていること。少し子供っぽくて恥ずかしいけど、そうすることでギターが上手くなると信じていた。大学生の頃まで、毎年大晦日には、自分の部屋で小さくラジオをかけながら、年が明けてしまうまで、ただギターを弾き続けた。それは僕にとって、とても大切な儀式だった。

　あの頃の僕にはギターしかなかった。ギターを手にしていれば、ただそれで幸せ。練習しているうちに、いつの間にか楽器を抱いたまま眠ってしまい、朝起きたらケースに入れて学校へ持って行く。授業中は、次の休み時間にはどんなことを練習しようかとばかり考えている。そんな毎日だった気がする。自分のギターを誰かに聴かせたいかどうかなんて、どうでも良かった。世界は、僕とギターの間で完結していた。その後、ある人との出会いが、僕の心のベクトルを外に向けてくれる。その出会いがなければ、今の僕はない。

　今年も年が明ける瞬間には、ギターを弾いていた。神戸のビックアップルというお店の、年末セッション。いいセッションだったと思う。演奏を終えて、「あぁこれで今年も少しはギターが上手くなれるんじゃないかな？なれますように！」と無意識に祈っている自分がいた。結局僕は、本質的にはちっとも大人になれていないし、何も変わっていないのかもしれない。人間なんてそんなもの。それでいいと思っている。